2023年8月24日木曜日

【そよ風ペダル】岸田國士『留守』⑥ 目線と頭とコミュニケーション

8/22(火)14:00-16:00 高槻城公園芸術文化劇場 中スタジオ2 担当:渡辺

隣の家の女中が、舞台となっている家の女中の髪を結うシーン。

当の家も隣の家も主人が外に出ているときには、いつもこっそり二人でお喋りしたり、髪を結ったりしている様子。


面と向かって喋るのではなく、頭をいじりながら喋るというのは面白いな、と改めて感じました。

新聞記者が政治家に話を聞くときなどは、対面よりもバーカウンターで横並びに座ったほうが色々聞き出しやすい、ということがあるそうです。

目を見られると、色々探られる、という緊張が生じてしまうのかもしれない。でも、横並びだと結構ベラベラ喋ってしまう。

よく「人の目を見て喋れ」などと言われたりしますが、目線をあわせない方が良いコミュニケーションができる、ということがあるのかもしれません。


今回のシーンも、ご主人とあなた(女中)の関係はどうなっているのか、という突っ込んだ話をする箇所なので、真正面から聞き出そうとするのではなく、「それとなく」話をすることが肝要です。

その意味で、髪を結う、という舞台設定はかなり秀逸だと感じられました。それだけに難しそうでしたが…

(さらに言えば、ときどき鏡ごしに目があう、みたいな気まずい?瞬間もおとずれるはずで、さらに演技は複雑に…)


少し話は変わりますが、人の頭をいじる、というコミュニケーションはかなり特殊です。

われわれも日常的に、散髪をしてもらうとき、頭を少し傾けたりするなど、結構「共同作業」の感じがあると思います。

そういえば実家で飼っていた猫とも、似たようなコミュニケーションがあったなぁと思い出しました。首まわりを掻いてあげていたら、猫が少し体勢をかえて、「次はこの辺りを掻いてくだされ」とせまってくる。

このとき、人間と猫とにあまり違いはないのかもしれません。「物」同士のやりとり、というか。


今回は、みんなお互いに遠慮して、あんまり頭を直接触ったりはしていませんでしたが、

「頭を実際に触って、結構雑にいじる」みたいなことをしてみても面白そうだなぁと思って見ていました。

理容師も、上手い人ほどあんまりこちらを気遣うことなく、頭部にだけ集中して、ぐいぐいと作業を進めていく印象があります。そして変に気を使って優しく扱われるより、雑な方が逆に(?)心地よかったりして。




2023年8月23日水曜日

【千年団】新シーズン開始!

8/22()15:0017:00

高槻城公園芸術文化劇場 中スタジオ3


6月の本番を終え、次の本番に向けた新シーズンが今日からスタートしました。





これまで通り、ストレッチと発声練習から稽古を進めます。


はじめて使うこの稽古場は、外壁が音を吸収しやすく、声が反響しにくい構造になっています。それゆえ、声が届く大きさや方向、その日の声の調子が、聞いていてわかりやすいそうです。



さて、しばらくは台本を離れて、俳優の基礎練習を行なっていきます。


今日はいくつかのワークショップ(シアターゲーム)を行いました。

順番に振り返っていきます。



①2人ペアで背中合わせになって座り、2人で動いてみるワーク


この体勢でいくつかの動きを行いました。

まずは、片方が自分の背中で相手の背中を押します。すると相手は前屈のような姿勢になっていきます。身体を倒していくと相手が痛みを感じてくるのを背中で感じとり、痛くならない程度のところで押すのをやめます。それを交互に行います。





別の動きでは、身体を同じ向きに倒してみたり、背中を押し合った状態で立ち上がってみたりしました。


相手の状態を身体(背中)で感じとり、時には息を合わせて同じ行動を取ってみるワークショップです。



(ここからは講座の管理に付いている僕(岡田)もワークに参加していたので写真を撮る暇はありませんでした。写真無しでワークをご紹介していきます)




②円になって並んで、数を数えるワーク


20までの数字を1から順番に言うのですが、円に並んだ誰が言っても大丈夫です。ただし、誰かと被ってはいけません。



次に、同じく円になって、5までの数字を数えながら、言った人は右足を一歩出します。なおかつ、言った数字と同じ人数が足を出さなければいけないルールです(「3」のときは3人が「3」と言いながら右足を出します)。


意外と難しいシアターゲームで、なかなか最後までいきません。


全体の空気や他の人の様子を窺うのが大事です。全体や他の人とのリズムを外して数字を言ったり、逆にリズムを読み取って誰かと合わせたり。

自分勝手にやると失敗してしまうので、常に全体への意識が重要になります。



③ 届ける声の距離や向きを感じるワーク


全員バラバラに立ちます。1人は集団から外れた位置に立ち、集団のうち誰か1人に向かって声をかけます。集団の人たちは声をかける人に背を向けて立ちながら、誰に向かって声をかけているのか感じとります。

真っ直ぐ一列に並んだ状態で同じようなこともやってみました。


声を届けるときに、声の色々な特性に気をかける必要があります。相手のいる位置に対して、どれくらいの大きさで言うのが適切なのか。音の波が横に広がらないように(他の人には届かないように)、どのように幅を狭めて伝えられるのか。


舞台の本番でも、声の届け方にリアリティがあると、観客にもそのリアリティが伝わります。



④”Yes, and”のワーク


インプロ(即興)の練習です。

2人ペアになり、相手の会話に対して、絶対に「いいですね」といったような肯定的な返事を返しながら、会話を進めます。なので、”Yes, and”です。


これの逆で絶対に否定的な返事をするパターンもやってみたり、無理難題なお願いに対して「ちょうどいいですね」という返事をして会話を進めるパターンも行いました。


即興というとどうしても面白いことをしなきゃいけないと思い込んでしまいがちですが、そんな必要はありません。

大事なのは、相手の話を聞くこと。肯定的にしろ、否定的にしろ、まずは相手の話を聞き、そこからつながる返事をお互いが重ねていくことが重要です。

設定があることで、普段の自分の会話では発展しえない方向に2人の状況が展開していくと、自然と面白いお芝居になっていくのかもしれません。




ーーー


こういったワークを重ねながら、来年に向けての創作を進めていきます。

2023年8月8日火曜日

【そよ風ペダル】岸田國士『留守』を読む⑤

8/8()14:0016:00

高槻城公園芸術文化劇場 中スタジオ2


本日も、岸田國士『留守』を用いて、練習をしていきます。

参加者が11人だったので、2人ペアを4チーム、3人トリオを1チーム作りました。

やってみるシーンは、

・ペア:p.9 お八重さん「痛かない?」〜p.10お八重さん「そん時になって考ても遅かないよ。」

・トリオ:p.20「何かして遊ぼうよ。」〜p.22八百屋さん「〜かまふこたねえや。(坐る)」


セリフを覚えることに目的があるのではなく、シーンがスーッと通ればまずは問題なし。



今日やってみているシーンのうち、面白くなりうる箇所があると筒井さんは言います。

具体的には、ペアだと「ヘチマコロン」の前後、トリオだと「八百屋が来た後の座るか座らないか」の箇所です。


面白くするときに、面白い「言い方」をまずは考えがちです。

でも、動き方や顔の変化といった方法でもユーモアを生み出すことはできるのです。


ここで一つワークを挟みました。

「筆箱が落ちている」というシチュエーションが設定され、それを発見した後、拾おうとするけどやっぱり拾わないという演技を色んなパターンで、ただし無言でやってみました。

「筆箱が落ちている」という情報だけでいろんなユーモアを、しかも言葉を使うことなく、膨らましていくことができます。


表情を作りすぎる必要はありません。ずっとニコニコしていることが良いわけではありません。無表情というと少し誤解が出てしまうかもしれませんが、無表情に近いベースの表情があれば、わずかな表情の変化でお客さんにも心情や意図がしっかり伝わります。




そして改めて、『留守』に取り組みます。

爆笑を取る必要はありません。ただセリフを読むのではなく、人物像が浮かび上がる芝居を作っていくことを目指していきましょう。