2023年3月1日水曜日

【千年団】右往左往、文字通り

2/28 13:00-17:00 富田ふれあい文化センター 小ホール 担当:渡辺健一郎

2月の終わりです。流石に暖かくなった。よかった。

少しずつ次第に、小道具が揃ってきました。今回の芝居の演出上、「物」はかなり重要な気がします。

一時期(20年以上前)の演技論として、全てをコントロールするための意志と身体を鍛えよう、というものがありました。
ところが本当のところ、人間はそんなになんでもかんでもコントロールできない。むしろ他人に振り回され、状況に振り回され、物に振り回され、さらには「自分」にも振り回されていることでしょう。

(たいへん大仰に書きますが)演劇の歴史は、「振り回されの歴史」とも言えるかもしれません。ギリシャ悲劇の詩人は「運命」に、シェイクスピアは「恋」や「言葉」や「亡霊」などに振り回される人間を描いていたのではないか。

チェーホフもまた、置かれている状況、様々な感情などに右往左往させられる人間模様を描いているわけですが、「スポーツ」をモチーフにした今回の演出では、単純にテニスラケットの重さによる遠心力が、人の身体をあっちへこっちへ振り回します。
この振り回される演技と、振り回される人間の表現とが、時折重なることで面白みが生まれる様に感じられる。

スポーツでもアートでも何でも、なんらかの「道具」を使う達人たちは、道具を自在に支配するのではなく、多かれ少なかれ「道具に身を委ねる」感覚があると聞きます。

「人間それ自体の面白さ」ではなく、「人間+物の面白さ」。
突き詰めるとこの「物」の範疇に、自分の手脚や心臓、横隔膜なども含まれてくるのかもしれませんが、いずれにしても「人間の意志や力ではどうにもならないこととどう付き合っていくか」…これが、人間にとっても演劇にとっても重要なことなのかもしれません。